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コラム

舌下免疫療法とは?効果・期間・副作用・費用・開始時期を解説

1 日前
読了時間: 8分

毎年のようにつらい症状を繰り返す花粉症や、一年中続くダニアレルギー。「薬で症状を抑えるだけでなく、症状の軽減や長期的なコントロールを目指したい」と考える方に近年注目されているのが「舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう:SLIT)」です。

従来のアレルギー注射と違って、注射を伴わず自宅で服用を継続できることから、5歳以上のお子様の治療で検討されることもあります。この記事では、免疫反応を少しずつ慣らしていく仕組みや開始時期のルールのほか、読者からよく聞かれる「飲み忘れたらどうする?」「風邪薬と一緒に飲んでいい?」「子供に毎日続けさせるコツは?」といった疑問まで解説します。



1. 舌下免疫療法の基本と仕組み

一般的なアレルギー薬(抗ヒスタミン薬など)が「今出ている症状を抑える」対症療法であるのに対し、舌下免疫療法はアレルギーの原因に少しずつ体を慣らし、症状の軽減や長期的なコントロールを目指す「アレルゲン免疫療法」の一つです。


免疫を少しずつ慣れさせるメカニズム

舌下免疫療法では、アレルギーの原因物質(アレルゲン)が含まれた少量の薬を毎日舌の下に含んで吸収させます。微量のアレルゲンを長期間継続して取り込み続けることで、免疫システムが原因物質に少しずつ慣れ、過剰なアレルギー反応が起こりにくくなることを目指す治療と考えられています。


注射(皮下免疫療法)との違い

これまでもアレルゲン免疫療法として「皮下免疫療法(注射)」がありましたが、通院頻度や注射への不安が継続の負担になることがあります。舌下免疫療法は、注射を伴わず自宅で1日1回服用を継続できる点が特徴であり、子どもの治療で検討されることもあります。



2. 薬の種類・費用・併用の考え方

現在、日本国内で保険適用となっている治療薬は、主に「スギ花粉症」と「ダニアレルギー」の2種類です。

項目

スギ花粉症向け

ダニアレルギー向け

代表的な薬名

シダキュア(スギ花粉舌下錠)

ミティキュア、アシテア(ダニ舌下錠)

対象年齢

5歳以上から可能

5歳以上から可能

服用方法

1日1回、舌の下に1分間保持して飲み込む

1日1回、舌の下に1分間保持して飲み込む

開始できる時期

6月〜12月のみ(飛散期は不可)

1年中いつでも開始可能

※具体的な診察代や薬代は、医療機関や自治体の医療費助成制度(子ども医療費助成など)によって異なります。


費用の目安と確認ポイント

舌下免疫療法の費用は、診察料、検査費用、薬代、処方日数、保険適用の有無によって変わります。保険診療で行う場合でも、初回は検査や診察が必要になるため、2回目以降より費用が高くなることがあります。子どもの場合は自治体の医療費助成制度によって自己負担が異なるため、受診前に医療機関や自治体の案内を確認しましょう。


他の薬との併用はできる?

「舌下免疫療法を始めたら、他の薬は飲んじゃダメ?」と不安になる方がいますが、花粉症薬や点鼻薬などを併用できる場合があります。服用中の薬や持病によって注意点が変わるため、自己判断せず医師・薬剤師に確認しましょう。

治療を始めてから症状の変化を感じるまでには時間がかかるため、花粉のピーク時などは従来のアレルギー薬(抗ヒスタミン薬や点鼻薬)を併用して症状を抑える場合があります。市販の風邪薬や解熱鎮痛剤を使用する場合も、服用中の薬や持病によって注意点が異なるため、医師・薬剤師に確認しましょう。



3. 治療期間と飲み忘れ時の対応

効果を持続させ再発を抑えるためには、最低でも3年、推奨としては4〜5年の継続が目安とされています。効果の感じ方には個人差がありますが、治療を継続することで、花粉シーズンや通年性アレルギーの症状が以前より軽くなる方もいます。


飲み忘れた時の正しい対処法

数年にわたる治療の中で「うっかり飲み忘れる」ことは誰にでもあります。その際は以下のルールを必ず守ってください。

  • その日のうちに気づいた場合: 気づいたタイミングで、いつも通り1回分を服用してください。

  • 翌日に気づいた場合: 前日分は諦めて飛ばし、その日の分(1回分)だけを服用してください。「2日分(2錠)を一度にまとめて飲む」ことはアナフィラキシーの危険があるため絶対にNGです。

もし数日〜数週間にわたって長期間飲み忘れてしまった場合は、自己判断で再開せず、必ず処方元の医師に相談してください(薬の濃度を最初からやり直す必要があるためです)。


舌下免疫療法が向いている人・慎重な判断が必要な人

舌下免疫療法は、毎年同じ時期に強い花粉症症状が出る方、ダニアレルギーによる鼻炎症状が続く方、眠気などの理由で対症療法薬だけに頼りにくい方に検討される治療です。一方で、重い喘息がある方、重篤なアレルギー反応の既往がある方、毎日の服用や定期受診の継続が難しい方は、開始前に慎重な判断が必要です。


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4. 副作用リスクと開始時期のルール

安全性が高い治療ですが、アレルギーの原因物質を直接体に入れるため、局所的な副作用(口の中のかゆみ、唇の腫れなど)が初期に起こりやすいとされています。


アナフィラキシーと初回投与のルール

ごくまれに、全身の蕁麻疹や呼吸困難を伴う重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こるリスクがあります。そのため、「初回の1回目の服用」は必ず医療機関の院内で医師の監視下で行い、服用後30分間は待機することが厳格に義務付けられています。


スギ花粉症は開始できる時期が限られる

スギ花粉の治療(シダキュア)は、花粉が飛散している時期(1月〜5月頃)には新たに開始することができません。 飛散期は免疫がすでに過敏になっており、激しい副作用を引き起こす危険性が高まるためです。飛散が完全に落ち着いた「6月〜12月」が、治療を開始できる唯一の期間となります。



5. 子どもが毎日続けるための工夫

5歳から治療可能とはいえ、親御さんの最大の悩みは「うちの子が、舌の下に薬を置いたまま1分間もじっと我慢できるか」という点でしょう。現場の薬剤師がおすすめしている、子供にスムーズに飲ませる工夫をご紹介します。

  • 一緒に時計を見る・動画を活用する: 「長い針がここに来るまで待とうね」と視覚的に見せたり、1分間だけ好きなYouTube動画を見せたりして気を紛らわせます。

  • ご褒美シールを用意する: カレンダーを用意し、1分間上手にできたらお気に入りのシールを貼るルールにすると、ゲーム感覚で習慣化しやすくなります。

  • 唾液を飲み込まない練習:服用練習をする場合は、薬を使わずに「舌の下に一定時間置いて待つ」感覚を確認する程度にとどめましょう。実際の服用方法や練習の可否は、年齢や飲み込みの状態によって異なるため、事前に医師・薬剤師へ確認してください。


服用後に注意したいこと

薬局で患者さんへ服薬指導をする際、薬剤師として最も強く警告しているのが、服用後は激しい運動や入浴、アルコール摂取を避けるというルールです。

血流が良くなることで、舌の粘膜から薬の成分が全身に急激に回り、思わぬアレルギー反応(アナフィラキシー)を誘発する危険性が高まるためです。子供の場合は「お風呂上がりや、外に遊びに行く直前には飲ませない」、大人の場合は「飲酒の予定がある夜は避けて、朝のルーティンに組み込む」など、一番安全で安静にできるタイミングを見つけて服用してください。



6. 継続治療とオンライン診療の活用

舌下免疫療法を数年間続けるうえでは、定期的な受診や薬の受け取りを無理なく続けられる環境づくりが大切です。医師が継続可能と判断した場合、症状が安定した維持期の通院方法としてオンライン診療を選択できるケースがあります。

そこで活用したいのが「オンライン診療」です。 アナフィラキシーのリスク管理のため、「事前の血液検査」と「初回の服用」は必ず対面での受診が必要ですが、副作用がなく状態が安定した「2回目以降の維持期」であれば、スマホでのオンライン診療に切り替えて毎月の薬を自宅に届けてもらうことが可能なケースがあります(※医師の判断によります)。



7. よくある質問(FAQ)

Q. 舌下免疫療法はいつから効果が出ますか?

A. 治療開始から数か月〜1年程度で症状の変化を感じる方もいますが、効果の出方には個人差があります。


Q. 舌下免疫療法は途中でやめてもいいですか?

A. 自己判断で中止せず、治療期間や再開方法を医師に相談してください。


Q. 舌下免疫療法はオンライン診療だけで始められますか?

A. 原因アレルゲンの確認や初回投与の安全確認が必要なため、初回からオンラインだけで完結できるとは限りません。



8. まとめ

舌下免疫療法は、スギ花粉症やダニアレルギーに対して、原因アレルゲンに少しずつ体を慣らしていく治療です。治療は3〜5年程度の継続が目安となり、開始時期、初回投与、飲み忘れ時の対応、副作用への注意など、医師の判断のもとで安全に進めることが大切です。継続治療中で状態が安定している場合は、オンライン診療を活用できるケースもあるため、ご自身の治療状況に合わせて相談しましょう。



参考文献



執筆者

執筆・監修:髙橋 文乃(薬剤師)


経歴:2022年に薬剤師免許を取得。大手ドラッグストアでの調剤・服薬指導を経て、KDDIに入社後、現在はPonta薬局で薬剤師として勤務。オンライン診療・オンライン服薬指導やヘルスケア領域の情報発信に携わる。

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