女性の毎月の体調不良、改善のカギはピル!?
- 7月2日
- 読了時間: 6分
毎月、悲しくもないのに急に何故か涙が出てしまう。パートナーは悪くないとわかっていても当たり散らしてしまって自己嫌悪感に陥る。体が鉛のように重い。そんな経験をしている方はいらっしゃらないでしょうか?そんなつらさを相談できず一人で苦しんでいる方は多いのではないでしょうか。それはあなたの性格や根性の問題ではないかもしれませんよ。
1.女性ホルモンによる体調変化について
女性の体は、1ヶ月の間に女性ホルモンが急上昇したかと思えば急降下します。そう、まるでホルモンのジェットコースターに乗っているようなものなのです。
では、そんな体調不良が毎月起こる人はホルモンの値が異常なのでしょうか?実はそうではなく、ホルモンの異常というよりも、ホルモンの急激な変化に対して脳が敏感に反応しやすいことが原因と考えられています。生理前には黄体ホルモン(プロゲステロン)が急激に減少します。そう、ホルモンジェットコースターの急降下です。その急降下により、脳内の神経伝達物質(セロトニンなど)のバランスが揺さぶられ、気分の乱れや体調不良が引き起こされると言われています。
では、強い生理痛はどうでしょうか?こちらは、生理のときに子宮内膜からプロスタグランジンという物質が放出されます。ジェットコースターの終着地で急ブレーキをかけるようなものです。本来は経血を外に押し出すために必要な作用ですが、勢いが強すぎると子宮がぎゅっと絞られるような痛みが生じてしまいます。
では、激しいジェットコースターから降りて穏やかな観光列車に乗り換えるにはどうしたらいいでしょうか?その切符となるのがピルです。「え?ピルって避妊の薬じゃないの?」と思う方が多いかもしれません。
2.ピル服用の効果について
さて、ここからはピルを飲むことで体の中にどんな変化が起こるのかを説明しましょう。
ピルとはどんな薬なのでしょうか。そこを理解するには卵巣から出ているホルモンを知る必要があります。卵巣からは排卵するまでエストロゲンという、いわゆる女性ホルモンが分泌されます。そして排卵するとプロゲステロンというホルモンが増加します。そして妊娠が成立しなければエストロゲンとプロゲステロンは低下し、生理が起こります。これが、ホルモンジェットコースターが頂上から一気に下る瞬間です。
ピルは、このエストロゲンとプロゲステロンという2種類のホルモンを人工的に一定量補い、ホルモンの波をなだらかにする薬です。
では、なぜ卵巣から出てくるホルモンと似たものを飲むと避妊効果が出るのでしょうか。それは、ピルを内服すると体内にエストロゲンやプロゲステロンが一定量存在するため、脳が「すでに十分なホルモンがある」と判断し、排卵を起こさないよう指令を出すからです。つまり、ジェットコースターそのものを動かさず、穏やかな観光列車に乗せてしまうイメージです。
卵巣の活動が抑えられ、ホルモンの変動が小さくなることで、はじめにお話ししたホルモンジェットコースターの急上昇や急降下が起こりにくくなります。また、ピルの作用で子宮内膜は厚くなりにくくなります。すると、ジェットコースターの終着地でかかっていた急ブレーキも弱まり、プロスタグランジンの産生も抑えられます。そうすることで、生理痛が軽くなるというわけです。そういう意味で、ピルは“激しいジェットコースター”から“穏やかな観光列車”へ乗り換える切符と言えるのです。
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3.気になる体重や妊娠への影響について
では、ピルを飲めばみんなハッピーなのでしょうか?薬である以上、副作用を気にされる方もいますよね。よく相談されるのは、「太るのでは?」「妊娠しにくくなるのでは?」という点です。
実際にピルを飲むと体重が増える方もいますが、脂肪が増えるというより、一時的なむくみによる変化であることが多いとされています。飲み始めの3ヶ月くらいはホルモン環境が切り替わる途中段階、いわば観光列車に乗り換えた直後で揺れが残っている状態です。やがて安定してくる方が多いです。
それでも体重が増えたままという方もいます。よくよく話を聞くと、もともと生理痛が強く、毎月数日間は食欲が落ちていたというケースがあります。ジェットコースターに振り回されて食事が取れなかった状態から、観光列車で安定し、毎日きちんと食べられるようになれば、摂取カロリーが増えるのは自然なこととも言えます。
では、妊娠についてはどうでしょうか。ピルは子宮内膜症の治療にも使われます。子宮内膜症では炎症により子宮・卵巣・卵管・腸など骨盤の内臓がくっついてしまい、不妊の原因になることがあります。ピルで排卵を抑え、ホルモンのジェットコースター運行を止めることで炎症を抑え、将来的な不妊のリスクを軽減できる可能性があります。また、ピルを中止すれば通常は排卵が再開します。
4.副作用と注意点
ただし、注意すべき副作用もあります。それが血栓症です。血液が固まりやすくなり、血管が詰まる病気で、まれですが命に関わることもあります。特に喫煙、肥満、高血圧、年齢ほかにもたくさんリスクがあり、一般の人が判断することは難しいです。ジェットコースターを安全に止めるには、きちんと整備された駅で乗り換える必要があります。つまり、医師の診察を受け、安全に使用できるか判断してもらうことが大切です。
5.おわりに
近頃はインターネットで海外から購入することも可能ですが、有効成分が十分に含まれていない製品や品質管理が不十分な製品が報告されているため、自己判断での使用は危険です。
これを読んで少しでもピルに興味を持った方は、医療機関を受診して相談してみてください。激しいジェットコースターから降りて、穏やかな観光列車に乗り換える切符が、そこにあるかもしれません。
参考文献
1.日本産科婦人科学会,日本女性医学学会編.OC・LEPガイドライン 2020年度版.東京,日本産科婦人科学会,2021
2.日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会編.産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023.東京,日本産科婦人科学会,2023
執筆者
吉川 徹(キッカワ トオル)先生
経歴
産婦人科専門医×緩和ケア認定医。2007年に関西医科大学を卒業後、大阪と広島の基幹病院にて、産婦人科の第一線で「命の誕生」を支え続けてきた。しかし、2021年に大きな転換期を迎え、現在は広島赤十字・原爆病院にて緩和ケア科医師として「最期のステージ」を支えている。医療の入り口(出生)と出口(死)の両極に立ち、人生のすべてをカバーする視点を持つ医師は全国でも極めて珍しい。誕生から看取りまで、命の全プロセスを知り尽くした「全人的な視点」が持ち味。





