漢方ダイエットのメカニズム
- 6月9日
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近年、「漢方ダイエット」が注目されています。しかし、「漢方」という言葉から安全なイメージを抱きやすい一方で、医薬品と健康食品の区別が十分に理解されていないことも少なくありません。自然由来であっても、作用と副作用が存在する点は変わりません。今回は、漢方の基本とダイエット効果、そして安全性について、医薬品と健康食品の違いを踏まえて整理します。
1. 漢方の基本
漢方医学は、体質(証)や全身のバランスを重視する医療体系です。西洋医学のように疾患名を中心に治療するのではなく、「気・血・水」のバランスの乱れを整えるという考え方に基づいて処方を選択します。
肥満の背景には、食事や運動習慣だけでなく、水分代謝の偏り、代謝機能の低下、ホルモンバランス、ストレスなど多因子が関与しています。漢方は、こうした体質的要素に着目し、補助的に用いられることがあります。
2. ダイエットに用いられる漢方薬(医薬品)
肥満症の改善補助として使用されることのある処方には、
防風通聖散
防已黄耆湯
大柴胡湯
などがあります。それぞれの漢方薬は下記の様な特徴があります。
●防風通聖散とは
1. どんな効果があるの?
防風通聖散は、複数の生薬から構成され、便通や体内の水分代謝に関連する症状の改善を目的として用いられることがあります。便秘の改善により排便が促されることで、体重の変化がみられる場合がありますが、その多くは体内の水分や内容物の排出によるものです。また、体質に応じて、むくみや皮膚症状が軽減することがあります。
誰にでも適するわけではなく、体力が比較的あり、腹部に脂肪がつきやすく、便秘傾向を伴う体質(いわゆる実証)に用いられることがあります。
腹部膨満感や腹囲の増加がみられる
便秘傾向がある
のぼせやすく、食欲が旺盛
肩こりや血圧上昇などを伴う場合がある
※注意点:体力が低下している場合や、胃腸が弱く下痢をしやすい体質(虚証)では、腹痛や下痢などの副作用が生じやすいため、使用には注意が必要です。
2. 副作用や注意点は?
一般に減量目的で知られることもありますが、あくまで医薬品であり、副作用や相互作用に注意が必要です。
下痢・腹痛: 大黄などの生薬を含むため、排便が促進され、腹痛や下痢がみられることがあります。
併用薬: 他の下剤と併用すると作用が強く出ることがあり、腹痛や下痢が増強する可能性があります。
効果のあらわれ方: 便通の改善は比較的早期にみられることがありますが、体重変化には個人差があり、生活習慣(食事・運動)の影響も大きいとされています。
●防已黄耆湯とは
1.どんな効果があるの?
防已黄耆湯は、体内の水分代謝の偏り(いわゆる「水」)を整えることを目的として用いられる処方です。
利尿作用: 余分な水分の排出を促す作用があります。
むくみ: 四肢のむくみが軽減することがあります。
肥満傾向: 水分代謝の改善により、いわゆる「水太り」に関連する症状の改善に用いられることがあります。
消化機能: 胃腸機能を補助する作用があるとされています
2. どんな人に向いている?
体力があまり高くなく、むくみやすく疲れやすい体質(いわゆる虚証)に用いられることがあります。
体内に水分が貯留しやすく、軟らかい体型を呈する
全身の倦怠感や易疲労感がある
発汗しやすい
夕方に下肢の浮腫が増強する
関節の腫脹や疼痛を伴うことがある(膝関節など)
3. 含まれている主な生薬
名称の由来となっている2つの生薬が中心となります。
防已(ボウイ): 水分代謝に関与し、浮腫や関節症状の改善に用いられることがあります。
黄耆(オウギ): 発汗調整や皮膚機能の維持、全身状態の改善に関与するとされています。
一般に「ダイエット目的」で認識されることもありますが、脂肪量の減少を直接目的とするものではなく、水分代謝の調整を通じた症状改善に用いられる処方です。
※注意点
使用初期に尿量の増加や自覚症状の変化がみられることがありますが、効果のあらわれ方には個人差があります。体質に適さない場合には、胃腸症状などの副作用が生じることもあるため、変化が乏しい場合や体調に異変を感じた場合は、医療専門職への相談が推奨されます。
●大柴胡湯とは
1.どんな効果があるの?
大柴胡湯は、体内の「熱」や「気」の停滞を改善することを目的として用いられる漢方薬です。主に、消化器症状や便秘傾向、体格がしっかりしていて腹部膨満感を伴うような体質(いわゆる実証)に用いられることがあります。
腹部膨満感や便秘などの消化器症状
体内に熱がこもりやすい状態(のぼせ、いらいらなど)
肩こりや頭重感などの随伴症状
※これらの症状は体質の一例であり、適応は個々の状態に応じて判断されます。
2. どんな人に向いている?
漢方では体質を重視し、大柴胡湯は以下のような体質(いわゆる実証)に用いられることがあります。
体格が比較的しっかりしている
体力がある
腹部膨満感があり、心窩部から季肋部にかけて抵抗や圧痛を認める(胸脇苦満)
便秘傾向があり、便が硬くなりやすい
ただし、これらはあくまで体質の一例であり、適応は個々の状態に応じて医師が判断します。「誰にでも有効な減量薬」ではなく、肥満治療の基本は生活習慣の改善であり、漢方薬は補助的に用いられるものです。
3. 含まれている主な生薬
複数の生薬が組み合わされた処方です。
柴胡(さいこ)・黄芩(おうごん):炎症や体内の熱に関連する症状の改善に用いられることがあります。
大黄(だいおう):排便を促す作用があります。
半夏(はんげ):悪心などの消化器症状に対して用いられることがあります。
芍薬(しゃくやく):腹部の緊張や痛みの緩和に用いられることがあります。
枳実(きじつ):消化管の運動に関連する症状の改善に用いられることがあります。
生姜(しょうきょう)・大棗(たいそう):消化機能の調整に関与するとされています。
※注意点
体力が低下している場合には適さないことがあり、虚弱体質や下痢をしやすい場合には、腹痛や下痢などの副作用がみられることがあります。
他の下剤と併用すると、作用が強く出る可能性があるため注意が必要です。
体格がしっかりしており、腹部膨満感や便秘を伴う体質に対して用いられることがありますが、効果のあらわれ方には個人差があります。
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3. 安全性と副作用
漢方薬(医薬品)には副作用があります。下痢、腹痛、動悸、発汗、発疹などがみられることがあり、まれではありますが、肝機能障害などの有害事象が報告されています。
特に甘草を含む処方では、偽アルドステロン症(低カリウム血症、血圧上昇、むくみ)を生じる可能性があります。複数の甘草含有製剤を併用した場合、リスクが高まるため注意が必要です。
また、センナなどの刺激性下剤成分を含む製品を長期使用すると、腸管機能の低下や下剤依存、電解質異常を生じる可能性があります。
4. 連続服用のリスクと相互作用
医学的評価なしに漫然と長期使用することは推奨されません。体調の変化を確認しながら、必要に応じて中止や見直しを行うことが重要です。
甘草を含む処方や刺激性下剤成分を含む製品では、利尿薬やステロイド薬との併用により電解質異常が生じる可能性があります。また、一部の生薬成分は抗凝固薬などと相互作用を起こすことが報告されています。すでに治療を受けている場合は、自己判断で開始せず、医療専門職に相談してください。
5.最後に
漢方ダイエットには、医薬品としての漢方薬がありますが、たとえ自然由来であっても、リスクは存在します。減量の基本は生活習慣の改善であり、漢方薬は補助的手段にすぎません。使用にあたっては、効果だけでなく安全性にも目を向け、必要に応じて医療機関で相談することが大切です。
執筆者
執筆:山本佳奈 先生 (医師)
経歴:
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。日本医師会認定産業医。一般社団法人 日本貧血改善協会理事・医学監修責任者、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。AERA DIGITAL コラムニスト。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)がある。



